2017.02.01

CRAZY WEDDING・森山和彦が語った、「情熱×ロジック」で既成概念を覆す事業哲学

名刺アプリ「Eight」のメディア、Business Network Lab(BNL)が主催する「Eight Fireside Chat」は、各界の第一線で活躍するゲストを招き、これからのビジネスネットワークについて語るトークイベントだ。

森山が代表を務めるCRAZY社は、完全オーダーメイドウェディングで注目を集めた。「CRAZY WEDDING」が成し遂げたのは、「結婚式の“式場”からの解放」と言えるだろう。2015年にはオーダーメイドのケータリングサービスを提供する「CRAZY KITCHEN」を、昨年7月には法人向けイベントサービス「CRAZY CREATIVE AGENCY」を立ち上げた。ほかにも、旅、教育、ホテルなどの事業を準備中だという。いよいよCRAZYのコンセプトとノウハウが多角的に展開されつつあるのだが、共通するのは「リアルの接点」をいかにクリエイティブに設計し、演出するかということだ。

ウェディングにしろ、ケータリングにしろ、イベントにしろ、CRAZYが手がけるプロジェクトはすべてが一点もの。「普通の事はしない」という森山の仕事術は、BNLのインタビューでも存分に語られている。

定員いっぱいの参加者を前にしてのEight Fireside Chatでは、さらに一歩踏み込み、森山の思考の源泉に触れる内容となった。

この日のホストであるBNL編集長・丸山裕貴の呼び込みに、笑顔で会場に姿を現した森山。CRAZY WEDDING立ち上げのきっかけは、妻であり、共同経営者である山川咲との協働作業だったという。

「もともとは彼女が『ウェディングをやりたい』と言っていたんですね。ぼくの興味は会社経営そのものにありました。ぼくの関心と、彼女のウェディングへの情熱とが組み合わさって、事業になっていったのです」

観客の最前列には、妻の山川咲も参加していた。

世の中にウェディングプランナーはたくさんいるし、独立している人もいる。しかしその多くは結婚式場と連携して仕事をしている。「式場」を持たない「完全オーダーメイド」は不可能だと業界では言われてきた。森山も山川も、ウェディング業界での経験があったわけではない。そんな彼らが成功を収めることができたのはなぜなのか。「業界の商慣習や過去の成功事例にとらわれなかったからでは?」という丸山の問いかけに、森山はこう答えた。

「よく『既成概念を覆す』と言いますが、それにはふたつ必要だと思っています。ひとつは、『こうしたい』という子ども心。少し堅い言い方をすると『本質的な衝動』です。ある人はそれを情熱と言い、ある人は夢と言いますが、これがない限り何も起こらない。では、情熱があれば何でもできるかといえば、それはNOです。ふたつ目に必要なのは知識です。ビジネスの知識や経験があるからこそはじめて化学反応が起こり、着想する。ロジックとハート、両方必要なんです」

CRAZY流ロジックの一例を挙げれば、「何をもって“コンテンツ”とするか」の発想がある。例えば、一般的な結婚式場にもある「撮影プラン」。1ポーズいくら、アルバムを作成すれば追加でいくら、というようにメニューが決まっている。そこでは誰が撮影するかは問題とされない。しかし森山は、「ぼくらはアルバムという商品は売っていません。カメラマンという“人”を売っています。人にお金をかけている」と言う。つまり、クリエイターに、より多くの対価が渡る仕組みをつくったのだ。それによってプロフェッショナルなクリエイターとのコラボが可能になり、「こんな式にしたい」というお客様の願いを叶えることにつながる。

ウェディングで積み上げた知見を生かして立ち上げたのがCRAZY CREATIVE AGENCYである。ここでも森山の発想は、一般的なイベントプロデュースの概念を覆す。たとえば、ある会社の○周年記念パーティーを企画するとする。そこで「コンテンツ」と言ったとき、「式次第」を指すと思う人が多いのではないだろうか。誰が挨拶をして、ゲストは誰で、どんな食事が出て、どんな出し物があって......。それももちろん大事なのだが、それ以前に、「主催者がちゃんと思いを持っているかどうか。それがなければ火がつきにくい」と森山は言う。

「日々大量の情報を消費して生きているぼくらは、命のリアリティーが欠けてしまいやすい。どんなパーティーに参加しても、主催者の思いを感じられなければ、『はいはい、知ってる、こんな感じね』と思われて終わり。だから、創業者なり社長なり、“人”を感じるということが、企業のパーティーにおいてはものすごく大事なんです」。ここでもコンテンツは「人」だ。

トークが熱を帯び、40分ほど過ぎたころ、「ここで一度ブレイキングをしましょうか」と森山が提案した。「3分ぐらい時間をとって、隣の人と話してみませんか?」と言う。丸山も「そうですね」と応じ、会場はしばし雑談の時間に。

業界は違えど、同じ登壇者に興味関心がある人が集まっている。観客同士の新たな出会いも、このイベントでは貴重なコンテンツだ。

トーク再開後、森山はこう切り出した。「今日のコンテンツはぼくと丸山さんだと思うんですね。でも、本来は隣の人もコンテンツだとぼくは思うんです。だけど多くの人は、許可がなければそのコンテンツを活用しない。ぼくはいつもそんな暗黙のフォーマットを崩して楽しいほうに持って行きたいなと思っているので、こんな提案をさせてもらいました」

「みなさんが楽しそうでなければ、ぼくはまったく楽しくないんです。ぼくの中で“楽しい”というのは、ぼくが楽しむことではなく、まわりの人たちもみんなが楽しんでいること。この場が全体的にいい感じだということです」。予定になかったブレイクタイムに、参加者は、「リアルの接点」を楽しくしたいという森山の思いの一端を体感したのではないだろうか。

しかし、森山の言う「いい感じ」は数値化も言語化もしにくい。こと「事業」においては、ハードルになりはしないのだろうか。「それはCRAZYの企業文化になっていますか。どうやって伝えているんですか」という丸山の問いから、話題は働き方、生き方へと移っていった。

「言葉だけで伝えるのは難しいですが、それ以外にも、間接的な方法はたくさんあります」と森山は答えた。「オフィス環境もそうですし、毎朝朝礼をしたり、みんなでランチを食べたり、合宿をしたりなど、仕組みで伝えています。非生産的だと感じる人もいるかもしれませんが、要は人間関係なんです。人間関係が良ければ仕事が楽しいということはすでに研究で明らかにされている。それならば、人間関係を構築する時間を取らないほうが非生産的です。人間関係が良いので、セクショナリズム(縄張り意識)がない。将来的にはもっとも生産的だと思います」

既成概念にとらわれない自由な社風というCRAZYのイメージと、「毎朝決められた時間に出社する」ことは一見矛盾するようにも思える。「朝礼なんて嫌だ、もっと自由に働きたい、という声はないんですか」という丸山の問いに、森山は「人間は、制限がないと自由を感じられないんです」と応じた。

「高度経済成長期にはみんなが同じように8時に出社することが良いとされました。社会が成熟して、多様性が尊ばれるようになると、みんな同じであることに幸せを感じられなくなる。そうしてフレックスタイム制が浸透した。それが現在です。ただ、そうすると今度は『みんなが同じ時間に来るのはダメ』になるんです。でもちょっと待ってくれ、と。それ自体が固定観念になっていませんか? と思うんです。いまのCRAZYでは、一定の経験を積むと出社時間が自由になったり、または家庭の事情によって働き方が選べたりはしますが、ベースは集まることを大切にしています。大事なのは組み合わせとバランスです」

ゲストによるプレゼンテーションは一切ない。参加者とともに、90分間、さまざまな角度から話を引き出し続けるからこそ、ここでしか生まれない新たな気づきが得られる。

トークは後半にさしかかり、CRAZYの新しい事業展開へ。丸山が「『2000社、100万人の雇用』『10名20社のマーベリックカンパニー』ということを発信していますが」と水を向けると、CRAZYが構想しているいくつもの事業が、森山の口から熱を込めて説明されていった。

「人間らしく暮らしを豊かにすることも、事業を激しく成長させてガンガンやることも、両方やりたいんです。どちらかではなく、二極のあいだを行ったり来たりする。

起業してみて最近つくづく思うのは、起業は偏見から始まるということです。『これ、絶対違う。もっと自由にできるはずだ』という思いは、既存の勢力からすれば偏見なんです。ある意味世界が狭いからできること。でも、起業して、この豊かなものをより大きく広げていこうと思ったときに、世界を知ることがすごく大事だなと思うようになった。世界を知るということは、いろんな人の気持ちを理解するということです。経営者としてはそれが成長につながる。ただ、そのときに、『世の中そんなもんだよね』という考えに染まってはいけないと思う。成長と純粋さ、両方大事にしたい」

Eightユーザーの参加者は、青森や愛知など、日本全国からこの日のために集まった。

質疑応答では、参加者からこんな質問が投げかけられた。「ひとつの事業を実現するまでに、いくつくらい、他の事業アイデアを捨てていますか」。この質問に森山はこう答えた。

「ビジネスのアイデアは、何個かは捨てていると思います。ぼくは『2000社、100万人』というような大きなことがやりたかったので、マーケットサイズがあるかどうかということもちゃんと考えていました。ただ、ニッチでもいいと思うんです。5人の会社だって十分にすごいことです。自分はこれをやりたいという情熱のほうが資産です。ただ、まったく経験のない分野で起業するのは時間がかかるので、何かしらの強みが生かせるほうがいいとは思います」

次に、「わたしはアイデアを考えるときにどうしてもついググってしまったり、何かと何かの組み合わせになってしまいます。アイデアを考えるときのリソースはどんなところにありますか」という質問には、こう答えた。

「いろんな情報を、価値判断せずに、頭の中においてある感じです。そうすると、お風呂に入っているときとかにふっとアイデアが出てきたり。ただ、自分のことをクリエイティブで新しい人間だとは思っていないですよ。新しいことが価値なのではなく、『ここまでやるのか』ということが、ぼくは価値だと思っているんです。何か新しいこと、クリエイティブなことをやらなくてはいけないということそのものが、じつは固定観念だと思う。いま楽しく思えること、いま幸せに思えることをどんどん出していくことが大事で、消耗している時間を減らしたほうがいい。そういう意味では、クリエイティブな生き方というのは『動く』ということなんじゃないかなと思います」

懇親会では、恒例のEightで名刺交換を実施。初めて使うという人も多い出会いの機能に、会場は大いに盛り上がった。

トーク終了後の懇親会ではCRAZY KITCHENによるケータリング料理が振る舞われた。プランナーが「Eightをイメージした」という料理は全部で5種類。全国の産地直送の食材を使った、目にも楽しい料理が運ばれてくると、参加者から「わあ」と歓声が上がった。意外性のあるレシピに参加者は舌鼓を打ち、懇親会も盛り上がる。2017年最初のEight Fireside Chatは盛会のうちに幕を閉じた。

Eightにちなんで、メニュー名の書かれた名刺を模した紙の上に、料理が提供された。

文/長瀬千雅 撮影/西田香織

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