Eight ユーザー事例

Eightの活用方法や利用シーンなどをインタビューさせていただきました。

『弱い繋がりこそ大切にすべき』ジャーナリスト佐々木俊尚さんに繋がりについての考えと、今後のEightの方向性についてのご意見を伺いました。(中編)

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ジャーナリストでSNSの動向などに詳しい佐々木俊尚さん。Eightを半年前から利用してくださっていると聞きつけて、お話を伺ってきました。

『弱い繋がりこそ大切にすべき』ジャーナリスト佐々木俊尚さんに繋がりについての考えと、今後のEightの方向性についてのご意見を伺いました。(中編)
お話しいただいた方:佐々木俊尚さん / ITジャーナリスト・作家 プロフィール

1961年、兵庫県西脇市生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。1988年、毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道部(名古屋)を経て、東京本社社会部。警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人や誘拐、ペルー日本大使公邸占拠事件やエジプト・ルクソール観光客虐殺事件などの海外テロ、オウム真理教事件などの取材に当たる。1999年にアスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年に退職し、フリージャーナリストに。以降たったひとりで事務所も構えず、取材執筆活動に邁進している。杉並区住基ネット調査会議委員、情報ネットワーク法学会会員、朝日新聞社総合研究本部客員研究員、オーマイニュース編集委員、経済産業省情報大航海プロジェクト制度検討タスクフォース委員、成城大学文芸学部非常勤講師、早稲田大学政経大学院非常勤講師、東京大学大学院情報学環電通寄付講座「コミュニケーションダイナミクス」特任研究員。『「当事者」の時代』、『キュレーションの時代』『レイヤー化する世界』など多数の著書がある。

前編『人と繋がりを持てる手段は複数持っておくのが健全』
中編『弱い繋がりこそ大切にすべき』
後編『ネットとリアルがシームレスになる』



名刺の意味を考えたら、情報はアップデートされてほしい

Sansan・日比谷(以降、Sansan)前回、佐々木さんは名刺交換したその日のうちにすべての名刺をEightに取り込むとおしえてくださいましたが、データとして取り込んだ後、紙の名刺はどうなさっていますか?

 

sasakisan2-3.JPG佐々木俊尚さん(以降佐々木さん):紙はすべて捨ててしまいます。7年くらい前までは紙の名刺をファイリングして全部とっていたんですが、あるとき意を決して捨てました。捨てた名刺は、12年間ほどやっていた新聞記者時代のもので、ほぼ全員が会社員か警察官。見直してみて、「この肩書きのまま仕事をしている人はいないな」と思ったのです。

 

名刺の目的は連絡をとること。古い名刺に関しては、その名前の人は存在しているだろうけれど、同じ肩書きだということはありえない。そうなると連絡のとりようもない。Facebookであれば名前で検索できますが、警察官でFacebookをやっている人は少ないですし。だから、情報がアップデートされていくような名刺だったら便利ですね。

 

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Sansan個人向けのEightでは、Eightを利用している人同士の名刺のアップデートができますが、現状では相手がEightを使っていなかったり、使っていてもEightに更新情報を登録していなかったりする場合には情報はアップデートされません。ただ、法人向けのSansanでは、日経テレコンやダイヤモンド社等が提供する異動情報をもとに登録している名刺の人が昇格したり異動、転職したりすると情報をお届けする仕組みにしています。手元のデータも書き換えます。

 

佐々木さん:個人向けにはやらないのですか?

 

Sansanご要望の多い機能の一つではあります。とはいえ、現状ではカバー率が非常に低いので、すぐには難しいですね。なぜなら、大企業の上役や官報で異動情報が出る公務員などであれば情報が公開されているので、ある程度のサービスレベルで情報をお送りできますが、まだまだ網羅的に多くの方の情報を追うことができないからです。たとえばSansan内で僕が広報から人事に異動したとしても、どこかに情報が公開されるわけではないですから。このような情報を追えるようになって初めて、サービス提供ができるのかなと、現時点では考えています。

 

佐々木さん:転職してもわからないですもんね。

 

Sansanそうですね。アメリカだと個人情報の取り扱いが日本ほど厳格でないこともあって、個人の属性情報のデータベースを作っている会社があります。たとえば米Salesforce.comは2010年に企業名簿サービスを手がける米Jigsawを買収しました。Jigsawはユーザーの協力によりデータを収集しており、約2100万人分の企業名簿データベースをオンラインで提供しています。この買収により、Salesforce.comの顧客は自社のCRM(顧客情報管理)アプリケーションでJigsawのデータを利用できるようになりました。クラウドベースB2Bデータサービス市場に参入する道が開かれたとSalesforce.comは説明しているのです。日本では、このようなデータベースを作ることは難しいと考えていますが、このSalesforce.comのケースは参考になりそうです。

 

佐々木さん:LinkedInなどの外部API(※)を利用していくという方向ということでしょうか。

 

※API:あるプラットフォーム(OSやミドルウェア)向けのソフトウェアを開発する際に使用できる機能とそれを利用するための規約のこと。あるソフトウェアの開発者が、そのソフトウェアの持つすべての機能をプログラミングするのは困難で非効率であるため、多くのソフトウェアが共通して利用する機能は、OSやミドルウェアなどの形でまとめて提供されている。個々の開発者は規約に従ってその機能を「呼び出す」だけで、自分でプログラミングすることなくその機能を利用したソフトウェアを作成することができる。

 

Sansanまさにそうです。これができるようになれば、Eightでも情報をアップデートできる仕組みが持てるようになるだろうと考えています。

 

Webマーケティングの動向とEight

 

SansanLinkedInのビジネスモデルも、Eightの今後を考える上では参考にしています。もともとLinkedInは就職支援サービスだったけれど、最近は営業支援側に情報提供をしています。キーマン情報、リード情報といった情報のを、LinkedInの登録情報を使って有償で提供し始めているのです。Eightもそういったサービス提供をする可能性はありますが、日本の場合、難しいところもあります。

 

佐々木さん:個人情報保護法にひっかかるということでしょうか。

 

Sansanそうですね。ただ個人情報に関しては、パーミッションをとっていけば解決できます。もしくは、個人情報をダイレクトに提供するのではなく、間接的に使用してサービス提供をする方法もありえます。たとえば保険会社が印刷関連の企業に勤めている社員を5人とりたいと思った場合、Eightの登録情報を使ってスカウトメールを送ったり、対象者だけに広告を掲示したり。現に、欧米のLinkedInはそういったことをもう始めているそうです。

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佐々木さん:SNSでは自ら発信する人が多いですよね。ただ、SNSを使っていない、名刺オンリーの人は、自分のことを発信しない人が多いです。そうなると、自分の情報を使われることに気持ち悪さを感じる人も多いかもしれませんね。

 

プライバシーの問題のやっかいなところは、法律的な点ではなく、心情的な点にあります。法律的にはガイドラインに則って行えば良いのだけれど、心情的な気持ちの悪さは、うまく払拭してやらないとならないでしょうね。

 

Sansanそうですね。もしかすると日本での展開よりも先に海外で展開した方がいいかもしれません。今、Eightはアジア圏に進出することを考えているんです。

 

佐々木さん:プライバシーの問題を考えると、東南アジアを始めとする新興国で先に展開した方がやりやすいかもしれませんね。プライバシーに対する考え方は、世代と年齢と国によって考え方は劇的に違います。日本では年齢が比較的高く、リベラル系の人ほど気にしますが、10代の人などはさほど気にしていません。小さい頃からガラケーでプロフなどを使って顔写真を平気で露出してきた人が多いからでしょう。またアメリカとか東南アジアは露出したほうが仕事になりますし。やりやすい地域で始めて見るのはおもしろいですね。

 

弱い繋がりこそ、大切にしたほうがいい

Sansan:では、人間関係観や今後のSNSの未来予想図についてお話をお伺いしたいと思います。佐々木さんは、全ての名刺をEightに取り込んでいらっしゃると前回おっしゃっていました。その辺りについて、もう少し理由を聞かせていただけますでしょうか。

 

佐々木さん:次に書く本のタイトルは『セーフティネットのこれからの作り方』にしようと思っているのですが、「セーフティネット」を作るために必要なのは、人との繋がりなのです。

 

今は不安定な時代で、多くの人がいつ無収入になるか、いつ会社をクビになるかわかりません。そういった時代に生きている私達は、自分でセーフティネットを構築することが必要です。

 

ホームレスの方々のルポをいろいろと読んでいるのですが、ホームレスになってしまう人にはセーフティネットがないんです。普通は、会社を首になったとしても田舎に帰ったり、奥さんがしばらくサポートしてくれたり、友達が「じゃ、うちにきなよ」と言ってくれたりして、一気にホームレスにはならないものです。でも、ホームレスになる人の多くが、会社を辞めたに瞬間に奥さんに離婚を突きつけられて、友達もおらず、田舎もなかったりしている。そうならないためには、自分でセーフティネットをたくさん準備することが必要なのです。

 

そのセーフティネットを作るために重要なのが、弱い繋がりの人間関係なのです。マーク・グラノヴェッター (Mark Granovetter) という現在はスタンフォード大学社会学部教授が、1970年にハーバード大学在学中に行なった研究で、「弱い紐帯の強み」"The strength of weak ties" 説というものがあります。これは、転職の情報などの耳寄りな情報は、弱い繋がりの人、つまりウィークタイズのほうが持っているという研究です。

 

考えてみれば、それは至極当たり前な話です。たとえば、強い繋がりのある家族や、同じ村社会に住んでいる人、いつも顔を合わせる人は、一緒に過ごしているので新鮮な情報を持ってはいませんよね。つまり、遠い、弱いつながりの知り合いをたくさん作った方がセーフティネットを作る上では有利なのです。

 

この遠い関係の人と弱く繋がるということは、Eightを始めとするSNSが得意分野です。多層的に、いろんな関係性の繋がりをたくさん持っている人が生き残れるのです。こんなことを考えているからこそ、弱い繋がりの人も大切にしていきたいと考えています。

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佐々木さんの考える、今後のSNSでの人間関係の見せ方

 

Sansan: では、Eightは今後どういう方向性で進化していけばいいと考えますか?

 

佐々木さん:そうですね。Eightに限らず今のSNS全体の今の最大の問題は「人間関係」が1つしかないことだと思います。Eightは自分と「名刺交換をした相手」という人間関係。Facebookは「友達」。Google+では一応、サークル登録ができるけれど、あれを使いこなせるのはグーグル社員くらいじゃないかな。笑 人間関係はあんなにきっちりと分けられないと思うんですよね。

 

たとえば、私は学生時代に山登りをしていたのですが、数年前に再開したら、新しく出会った人から「登山をやるなら一緒に登ろうよ」と言われました。こういった環境でたとえばGoogle+で「山登り」サークルを作って知り合いを入れたとして、学生時代の登山仲間はやめてしまっているかもしれない。属性が重なりあうところもありますし、人間関係というものはもっとダイナミックでもやもやしているものだと思うんです。

 

こういったダイナミックな人間関係を、ある程度自動的に振り分けてくれて、ぼんやりと「こういうクラスター」と見せてくれるようなものが生まれてくるといいのではないでしょうか。たとえばamazonで書籍を購入すると、類書がおすすめ本として提示されますよね。ああいった類書を提示するような機能が人間関係においても出てくると、おもしろいですね。

 

Sansan:具体的にはどういうものでしょうか? Facebookで出てくる「知り合いかも?」リストでは、やはり人間関係が自分と「友達」の1つだけだから、違いますよね。

 

佐々木さん:「知り合いかも?」リストよりも、facebookのエッジランク・テクノロジー(※※)に近いかもしれません。ああいったアルゴリズムで精査され、精緻化されて、漠然と自分の頭の中で「あの辺の人たち」「このクラスター」と分けていたものを自動的に可視化してくれるイメージです。

 

※※エッジランク:投稿したコンテンツを友だちやファンのタイムライン上に表示する/しないを決定するためのアルゴリズム。facebookの投稿は10%くらいしか見えていない。

 

Sansan情報として、どのように届けるとわかりやすいでしょうか。

 

佐々木:spysee(http://spysee.jp/)を想像してもらうといいかもしれません。私は前々から、「人間関係はベクトルだ」と思っています。たとえば、学生時代の友人といっても関係性が近い人と遠い人がいますよね。そんな感じで方向と距離がある。そういったものが可視化されるとわかりやすいですね。しかも、今のspyseeは2次元で見えていますが、重なり具合がわかるように、3次元で見えるイメージです。

 

Sansanおもしろいですね。今後の検討課題とさせていただきます。ありがとうございます。次回は、さらに今後のSNSの未来予想図やこういう時代だからこその人間観についてのお話をお伺いしたいと思っております。よろしくお願いします。

 

【佐々木俊尚さんの人脈術まとめ(中編)】

・    良い情報を持ってきてくれるのは、弱く繋がっている人。弱い繋がりの人ほど大切にする

・    弱い繋がりの人とはSNSでゆるくつながっておく

・    人間関係は方向性とベクトルの3次元で把握

 


 


 【書籍情報】

 『レイヤー化する世界 テクノロジーとの共犯関係が始まる』

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 佐々木俊尚著

NHK出版新書

¥ 820+税

(2013-06-10) 

国民国家、民主主義の成り立ちを丁寧に解説し、インターネットの登場によって変化を遂げつつある世界を紹介した書籍。情報技術の革新は、メディアや産業の構造を根底から変え、超国籍企業を生んで労働と富のグローバル化を加速し、国ぐにの力を殺いています。そんななか個人もまた、生きかたの変容を迫られています。これからの世界はいったいどのようなものになり、どう考えていったら良いかの視座を変える書籍です。


前編『人と繋がりを持てる手段は複数持っておくのが健全』
中編『弱い繋がりこそ大切にすべき』
後編『ネットとリアルがシームレスになる』

名刺管理 Posted on 2013.11.26

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